さよならは悲しい言葉

 京都に住んでいたころの話です。季節は夏の終わりでした。八条口から京都駅構内に向かって歩いていたとき、新幹線の改札口から、女の子の大きな声が響いてきました。
「イヤや!」
 
 何だろう?聞き耳を立て、近くにいた人たちが一斉に足を止めました。
 見るとご家族らしき人たち。お母さんと女の子、そしてその子の妹さん、大きな声はどうやらお姉ちゃん、近くにはお婆ちゃんが心配そうに見守っています。

「アカン!帰るの!」
 お母さんが、負けじと金切り声をあげています。

「イヤや!帰らへん」
 強情そうな、女の子の甲高い声。

「ほな、どうすんねん!」
 お母さん

「ここに住む!」
「アカン!」
 
 そして最後に女の子は、目一杯大きな声でこう叫んで泣き出しました。
「ここに住む!ここに住んで、おばあちゃんと一緒に暮らす!わぁ~~~ん」

 子どもはいつも、大人の胸をせつなくさせます――。

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